こんにちは。AIコンサルタントの野口です。
3月23〜24日にかけてOpenClawが立て続けに大型リリースを行いました。単なるバグ修正ではなく、ブラウザ制御の構造的刷新・セキュリティ強化・モデル対応拡張・プラグイン体系の整備と、複数の軸で同時に進化しています。
ただ、嬉しい話ばかりではありません。旧来の設定のまま npm update するだけでは壊れる箇所があります。 今回の記事では「何が変わったか」だけでなく「どう対処するか」まで実例コードつきで丁寧に解説します。ぜひ本番環境に適用する前にひと通り目を通しておいてください。
0. まず最初にやること ── アップデートと健康診断
アップデートは以下の手順で行いましょう。必ず doctor を先に走らせるのがポイントです。
# 現在のバージョンを確認
openclaw --version
# 最新版にアップデート(npm / pnpm どちらでもOK)
npm install -g openclaw@latest
# または
pnpm add -g openclaw@latest
# ★ アップデート後は必ずこれを実行
openclaw doctor --fix
openclaw doctor --fix は今回のアップデートで最も重要なコマンドです。後述するブラウザ設定の自動移行や、staleなプラグイン参照の除去など、複数のマイグレーションをまとめて処理してくれます。
1. 【破壊的変更】環境変数・ディレクトリ名の統一
旧名称(CLAWDBOT_*、~/.moltbot)から正式名称への移行が今回の最大の落とし穴です。特に systemd や .env で旧変数名を使っていた方は、起動しなくなるケースがあるので必ず確認してください。
確認コマンド
# 旧変数名が残っていないかチェック
grep -r "CLAWDBOT_" ~/.config/openclaw ~/.env 2>/dev/null
grep -r "moltbot" ~/.bashrc ~/.zshrc ~/.profile 2>/dev/null
# 旧ステートディレクトリが残っている場合は手動移行
ls ~/.moltbot 2>/dev/null && echo "移行が必要です"
移行手順
# ① バックアップを取る(必須)
cp -r ~/.moltbot ~/.moltbot.bak.$(date +%Y%m%d)
# ② ディレクトリを移動
mv ~/.moltbot ~/.openclaw
# ③ 環境変数の書き換え例(.bashrc / .zshrc)
# 変更前
export CLAWDBOT_API_KEY="your_api_key"
export CLAWDBOT_WORKSPACE="/path/to/workspace"
# 変更後
export OPENCLAW_API_KEY="your_api_key"
export OPENCLAW_WORKSPACE="/path/to/workspace"
systemdサービスを使っている方へ
# /etc/systemd/system/openclaw.service の変更例
[Service]
# 変更前
Environment="CLAWDBOT_API_KEY=your_api_key"
Environment="CLAWDBOT_LOG_LEVEL=info"
# 変更後
Environment="OPENCLAW_API_KEY=your_api_key"
Environment="OPENCLAW_LOG_LEVEL=info"
# systemdのリロードと再起動
sudo systemctl daemon-reload
sudo systemctl restart openclaw
sudo systemctl status openclaw
WSL2でsystemdを使っている方(私もそうですが)は、/etc/systemd/system/ 配下のユニットファイルを忘れずに確認してください。
2. 【破壊的変更】Chrome拡張リレーの廃止 ── ブラウザ制御が新方式へ
Chrome拡張機能を使った旧来のリレーパス(driver: "extension")が完全に削除されました。ブラウザ自動化を使っている方は必ず doctor --fix で移行してください。
自動移行(推奨)
openclaw doctor --fix
# ログに "Migrated browser config: extension → existing-session" と出ればOK
手動でconfig.yamlを書き換える場合
# 変更前(旧設定)
browser:
driver: "extension"
relayBindHost: "127.0.0.1"
# 変更後(新設定)
browser:
driver: "existing-session"
profile: "user"
# または headless環境では:
# driver: "chromium"
# headless: true
Chrome DevToolsアタッチモードの使い方(新機能)
既存のChromeセッションにアタッチして操作できる新しいアプローチです。サインイン済みのブラウザをそのまま使えるので、認証フローがぐっと楽になります。
# Chromeをリモートデバッグポートつきで起動
google-chrome --remote-debugging-port=9222 --user-data-dir=/tmp/chrome-debug
# OpenClaw側でアタッチ
openclaw browser attach --port 9222
# config.yamlでの恒久設定
browser:
driver: "existing-session"
cdpUrl: "http://127.0.0.1:9222"
profile: "user"
Docker・ヘッドレス・リモートブラウザのフローは引き続きraw CDPを使うため、変更は不要です。
3. 【新機能】GPT-5.4 + Qwen のデフォルトモデル更新
OpenAIのデフォルトセットアップモデルが gpt-5.4 に更新されました。さらにAlibaba Cloud Model Studio(Qwen)の従量課金制エンドポイントが追加されています。
GPT-5.4への切り替え
# config.yaml
models:
default: "openai/gpt-5.4"
codex: "openai-codex/gpt-5.4"
# 画像生成もデフォルト統合済み
tools:
image_generate:
provider: "openai"
model: "gpt-image-1"
Qwen(Alibaba)の設定方法
# config.yaml
providers:
qwen:
type: "dashscope"
apiKey: "${QWEN_API_KEY}"
region: "global" # または "cn"(中国向け)
model: "qwen-max"
# 環境変数で渡す場合
export QWEN_API_KEY="sk-xxxxxxxxxxxx"
openclaw config set providers.qwen.region global
Claudeユーザーとして正直に言うと、用途によってモデルを使い分けるマルチプロバイダー構成が今後の主流になっていきます。コスト管理の観点からも、軽量タスクにはQwenやHaikuを使う設計は理にかなっています。
4. 【新機能】ClawHubプラグインがnpmより優先
プラグインのインストール順序が変わりました。openclaw plugins install <name> は、まずClawHubを探してから、見つからない場合のみnpmへフォールバックします。
プラグイン管理の基本操作
# ClawHub優先でインストール(v2026.3.22〜の新動作)
openclaw plugins install my-plugin
# 明示的にClawHubを指定する場合
openclaw plugins install clawhub:my-plugin
# バージョン指定
openclaw plugins install clawhub:my-plugin@1.2.0
# npmを明示的に使いたい場合
npm install -g openclaw-plugin-my-plugin
# アンインストール(バージョンなし名称にも対応)
openclaw plugins uninstall clawhub:my-plugin
openclaw plugins uninstall my-plugin # ← これも動くようになった
プラグインの互換性確認
# インストール済みプラグインの一覧と互換性チェック
openclaw plugins list
openclaw plugins check
# 特定プラグインの詳細
openclaw plugins info clawhub:my-plugin
旧 openclaw/extension-api を使っているプラグインは openclaw/plugin-sdk/* への更新が必要です。プラグイン開発者の方は以下を参考にしてください。
// 変更前(旧API)
import { Plugin } from "openclaw/extension-api";
// 変更後(新SDK)
import { Plugin } from "openclaw/plugin-sdk/core";
import { ToolHandler } from "openclaw/plugin-sdk/tools";
export class MyPlugin extends Plugin {
async onLoad() {
this.registerTool(new ToolHandler("my_tool", this.handleTool.bind(this)));
}
}
5. 【強化】セキュリティ ── ゲートウェイ認証とリモートメディア
今回のリリースはセキュリティ面でも大きく強化されています。特にセルフホストで公開ポートを持っている方は確認必須です。
信頼済みプロキシの設定見直し
# config.yaml
gateway:
auth:
trustedProxies:
# 明示的なIPのみ許可(ループバックの自己申告は無視されるようになった)
- "10.0.0.1"
- "192.168.1.0/24"
# デバイスレス・プロキシセッションへのadmin/secretsスコープ付与を禁止
disallowProxyAdminScope: true
リモートCDPのSSRF対策
browser:
ssrfPolicy: "strict" # プライベートホストへのリモートCDPアクセスを警告
# cdpUrlに内部IPを指定した場合はwarningが出るようになった
# 現在のセキュリティ設定を確認
openclaw gateway status --security
openclaw doctor --check-security
Nostr / Synology Chat利用者への注意
# Nostr: 未知の送信者からのDMに対するレート制限が追加
nostr:
inboundDmPolicy: "known-only" # または "all"(デフォルトは厳格化)
maxInboundMessageSize: 65536
# Synology Chat: mutableなusernameではなく数値user_idで宛先を固定
synology:
recipientIdMode: "numeric" # デフォルト。"username"は危険フラグ付き
6. 【地味に便利】CLIの改善点あれこれ
cron のタイムゾーン問題が修正
# 正しくDSTを考慮したスケジュール設定(日本時間で指定)
openclaw cron add --name "daily-report" \
--at "09:00" \
--tz "Asia/Tokyo" \
--command "skills run daily-summary"
# 繰り返しタスクに --tz は不要(--every と組み合わせると却下される)
openclaw cron add --name "hourly-check" \
--every "1h" \
--command "skills run health-check"
バージョン確認が分かりやすく
# アップデート状況が明確に表示されるようになった
openclaw update status
# → "Up to date. Local: 2026.3.23-2 / npm latest: 2026.3.23-2"
# git commitハッシュもバージョンに含まれるように
openclaw --version
# → "2026.3.23-2 (e7d11f6)"
壊れた設定ファイルへの対応
# エージェントトランスクリプトが壊れていても復旧できるように
openclaw agents replay --session <session-id> --auto-repair
# staleなplugins参照を自動削除
openclaw doctor --fix-plugins
7. Node.jsバージョンの確認を忘れずに
今回から推奨ランタイムが Node.js v24 に引き上げられました(v22.16以上でも動作します)。
# 現在のバージョン確認
node -v
# nvmでv24をインストールする場合
nvm install 24
nvm use 24
nvm alias default 24
# バージョン確認
node -v # → v24.x.x
npm -v
# OpenClawを再インストール
npm install -g openclaw@latest
openclaw --version
WSL2でnvmを使っている方は、.bashrc や .zshrc のnvm初期化ブロックが正しく読み込まれているか確認してください。systemdサービスはログインシェルを経由しないため、ExecStart に直接フルパスを指定するのが確実です。
# /etc/systemd/system/openclaw.service
[Service]
ExecStart=/home/youruser/.nvm/versions/node/v24.0.0/bin/openclaw start
Environment="NODE_ENV=production"
まとめ ── 今日やるべきチェックリスト
# 1. バックアップ
cp -r ~/.moltbot ~/.moltbot.bak.$(date +%Y%m%d) 2>/dev/null || true
cp -r ~/.openclaw ~/.openclaw.bak.$(date +%Y%m%d) 2>/dev/null || true
# 2. Node.jsバージョン確認
node -v # v22.16+ または v24推奨
# 3. アップデート
npm install -g openclaw@latest
# 4. 環境変数・ディレクトリの移行
mv ~/.moltbot ~/.openclaw 2>/dev/null || true
# .bashrc / .zshrc / systemdの CLAWDBOT_* → OPENCLAW_* 置換
# 5. ヘルスチェックと自動修復
openclaw doctor --fix
# 6. 動作確認
openclaw --version
openclaw gateway status
openclaw plugins list
今回のアップデートは「地味に大きい」です。普段使いしていると気づきにくいのですが、ブラウザ制御の刷新・セキュリティ強化・ClawHubの一等市民化など、中長期的なアーキテクチャの方向性が明確になってきたリリースだと感じています。
特にClawHub経由のプラグイン管理は、今後のエコシステム拡大の布石だと思います。自作スキルやプラグインをClawHubに公開して収益化する、という動きも出てくるのではないでしょうか。
何か詰まったことがあればお気軽にコメントください。
この記事は公式CHANGELOGおよびGitHub Releasesをもとに執筆しています。
OpenClaw GitHub: https://github.com/openclaw/openclaw